FIFAランクというと、「実際の強さとは関係がない」という評価が半ば反射的になされるのを目にする。勝ち点を基礎に試合の重要度や対戦相手の強さといった係数をかけて算出するものである以上、強さと無関係というのはさすがに暴論であろう。また、「こんな順位は意味がない」も同様であろう。FIFAランクを基準としてW杯本大会や予選の抽選のポッドが振り分けられる以上、順位自体は意味を持つ。もっとも、強さとの関係の程度等については批判の余地がある。これを検討するにあたっては、「手段は目的との関係で評価すべきだ」ということを念頭に入れておく必要がある。
こうして指摘されている部分に関しては、より納得のいく順位が現れることをFIFAも当然望んでおり、何度か改定を重ねて苦慮している。直近ではドイツW杯後の2006年7月12日に評価方法は改定されている。とりわけ直近4年のすべての国際Aマッチをポイントの対象にする変更は、対戦相手の強さごとの重み付けとあいまって、強豪国間での試合が多い上位国におけるランクをより正確なものとした。
この計算式にはFIFAも満足しているのか、改定後初の南アフリカでのW杯では、ポッド1決定の際に、グループリーグ抽選会前のFIFAランクの上から7カ国をそのまま採用しており、開催国+ランキング上位7位がそのままポッド1とされている(グループリーグでは、ポッド毎にA~Hの組に国を配置していく方式がとられている。つまり、同じポッドに入った他の強豪国とはグループリーグにおいて異なる組に入ることとなる)。もちろん地域の割り振り等を考慮した結果としてこれに落ち着いた可能性もあるが、いずれにせよFIFAランクはランク上位国に対しては重要な考慮要素として用いられている。
以上の通り、FIFAランクは実際の強さと一定の関係があり、また、W杯予選や本大会の組み合わせのポッド分けにおいて実際的な意味を持つ。新しい計算式は、少なくともランク上位国は実際の強さを反映しているように思え、また、実際的な大きな意味を持つのも上位国に限られる(7位前後の国の国民であれば、制度への批判は切実な意味を持つだろう)。W杯の予選もまた、FIFAランクに基づき抽選の割り振りがなされるが、ランクが世界における立ち位置を示さないまでも、同じ予選地域における上下関係について実際の強さを反映していれば足りる。そうだとすると、問題のない計算式であるように思える。
他方で、FIFAのブラッター会長は、W杯のアジア枠を増やすべきだという趣旨の発言を今年の5月にしている。その根拠は、FIFAの収入はアジアが半分を占め、欧州の貢献度は2割以下だという点にあるとされている。ポッド分けにおいて同地域のチームが多くあたらないように工夫したり、考慮要素は表立って言及されるもの以外にも、実に様々あるだろう。その中で、試合結果を基に計算される考慮要素たるFIFAランクは、意外と好ましいものなのではないだろうか。
ちなみにFIFAランクの正式名称は「FIFA/Coca-Cola World Ranking 」である。過去4年の国際Aマッチを対象に計算する。計算式は以下の通りである。思われている以上に係数の値は実は多くの人の主観とマッチするのではないか。
◆マッチポイント
⇒(A)×(B)×(C)×(D)×100
・(A)
⇒勝ち点
⇒勝ち:3、引き分け:1、負け:0。PKのときは勝ち:2、負け:2。
・(B)
⇒試合の重要度
⇒親善試合等:1、大陸選手権予選、W杯予選:2.5、大陸選手権本大会、コンフェデ:3、W杯本大会:4
※「大陸選手権」とは、EURO、アフリカネイションズカップ、コパアメリカ、CONCACAFゴールドカップ、OFCネイションズカップ、アジアカップの6つの大会をいう。今月行われる東アジア選手権は「親善試合等」にあたり、係数は親善試合と同じ1である。
・(C)
⇒対戦国の強さ
⇒対戦時点でのFIFAランキングが適用される。1位:2、2位~149位:(200-対戦国のFIFAランク/100、150位以下:0.5
・(D)
⇒対戦国が所属する連盟の強さ
⇒UEFA: 1.0 CONMEBOL: 1.0 CONCACAF: 0.88 AFC: 0.86 CAF: 0.86 OFC: 0.85の定数をもとに、2国の定数の平均値を係数とする。
◆ランキングポイント
⇒4年を1年ずつ4つに区切り、直近の1年ごとに、上記で算出したマッチポイントの合計を計算し、試合数で割る(ただし、5試合以下のときは5で割る)
⇒そしてその4つの数値に、直近の1年のものには1、以下0.5、0.3、0.2をそれぞれ掛け、足し合わせる。
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