◆本田の移籍問題
ミラン副会長のガリアー二の先月末の発言は「ミランには攻撃的な選手がたくさんいる。本田に入る余地はないね」にとどまるものであった。しかし、7月4日には「本田?どうなるかみてみよう」と発言するに至っている。我々日本人は本田の移籍に関し幾多の一喜一憂を経験している。今回も予断を許さないが、進展は進展である。
「どうなるかみてみよう」というのは、移籍関係の話題において、受け手の想像力を執拗に喚起する言葉としてよく用いられるものだ。原文では「Honda? Vediamo...」と述べている。イタリア語の発音は英語とは異なり綴りと発音は固定されており、単語ごとに読み方が異なることはない。そして、ローマ字読みでそれっぽく発音すれば基本的には大きく間違うことはない。vediamoはべディアーモと発音する。英語でいうseeにあたる動詞である。ホンダ?ベディアーモ。
移籍関係でミランに関し覚えておくべき人物の名前は二つある。一つは、上記のガリアー二であり、もう一つが名誉会長のベルルスコーニである。そう、三期にわたりイタリアの首相を務めた人物がその男である。先月末に禁固7年の地裁判決がなされたことが記憶に新しいが、ガリアー二はこのベルルスコーニの傀儡であると言われている。この判決後においても、ガリアー二はミラン現監督であるアッレグリの続投につきベルルスコーニとの話し合いの場を持った。結果としてアッレグリ監督の続投が発表された。このように、ミランといえばこの二人の人物を把握すれば、話が見えやすくなるだろう。
現地の記者等から様々な情報が小出しにされつつも移籍がもたついている理由は、本田の現所属チームがその選手を手放さない手腕に長けたチームであることも当然その一つとなっている(移籍金設定の綱引きにおいて、非常に強気にでるチームである)が、以前述べたような経営に対するレギュレーションの影響も大きい。リーグにおいては、以前述べた通り、セリエAは経営破たんすると強制降格のペナルティがある。また、UEFAにより欧州のクラブには2011年6月からファイナンシャルフェアプレーも導入されており(具体的には、11~14の3シーズンで認められる累積赤字の額が決められており、これに違反するとCLやELの出場権が剥奪されるなどの大きいペナルティがある)、これも当然に適用される。このように移籍において慎重な動きを求める切実な背景がある。
★シャルケのこと
シャルケの移籍に関して覚えておく人物はヘルトというスポーツディレクターである。彼が移籍に関する責任者となっている。
先月末にはマインツのアダムサライのシャルケ入りが決定した(その影響か岡崎はマインツへ)。ワントップのセカンドチョイスのマリカは頼りなく、また、プッキは覚醒までに時間がかかりそうであり(今年3月のW杯予選でスペイン代表相手に得点してからは、シャルケでもいい動きを見せ、得点もしている)、アダムサライはフンテラールのバックアップの即戦力として期待できそうだ。
そして7月2日、かねてより噂されていたゴレツカのシャルケ入りも発表された。ドルトムントからの関心も噂されていたドイツの若き大器ゴレツカがシャルケ入りを決めた理由の一つは、転校せず高校を卒業できることだったそうだが、もう一つは、シャルケの若手育成に対する評価だったという。下部組織ではエジル、そしてノイアーを輩出しているが、昨期シャルケではトップチームで3人の10代が活躍している。一人はドイツフル代表にも選ばれているドラクスラーであり、ホルトビーの移籍もありトップ下での経験を積んでいる。そして、左SBではフクスの不調もあり、コラシナツがシーズン途中からスタメンに定着している。もう一人はマックス・マイヤーである。彼もドイツの将来を支える若き大器と言われている。このような環境が、彼がシャルケ入りを望んだ理由の一つとなったようだ。
なお、このほかにはライバルの黄色いチームからフェリペ・サンタナが移籍している。同じブラジル出身のバストスと仲が良いそうだ。そして、ケルンからクレメンスが移籍した。昨年末のドイツ杯(DFBポカール)のシュトゥットガルト戦では、走り込んでクロスをペナルティエリア前で受け、トラップでDFをかわし得点を決めていた。左右の足で強烈なミドルを決め、走り込んでワンタッチゴールを決め、FKも決めることができる。イスラエルで行われた先のU-21欧州選手権においてもホルトビー率いるドイツ代表として全試合に出場している(ロシアに勝利しているが、オランダとスペインに負けグループステージで敗退)。なお、U-21とあるが、これは予選開始時の年齢制限であり、本大会時には23歳以下の大会となっている。クレメンスは現在21歳である。
★ゲッツェの入団会見問題
ドルトムントからバイエルンに移籍したゲッツェの入団会見が7月2日に行われた。そこでゲッツェはクラブのスポンサーであるアディダス製のユニフォームを持ちカメラに笑顔を向けているが、その着用しているTシャツの胸には大きくNIKEと書かれていた。そして怒るアディダス。そして謝るバイエルン。
3冠を達成した昨期のバイエルンは圧巻であった。補強したダンテ(先のコンフェデのイタリア戦でダビドルイスの怪我により代わりに入りフレッジのシュートのこぼれ球を押しこんだブラジル代表の髪がもさもさしたDFである)、ハビ・マルティネス(先のコンフェデのイタリア戦でトーレスの代わりになぜかワントップの位置に入れられたスペイン代表のボランチである)、そしてマンジュキッチがことごとくあたりスタメンに定着し、マンジュキッチにスタメンを奪われたマリオゴメスは少ない時間でも結果を出し、クロースが怪我をすればミュラーがトップ下に入り右SHにスタメン復帰したロッベンは輝きを取り戻し、メンバー全員がそのクオリティを発揮した。ブンデスではほぼ控えメンバーで臨んだ試合においても大量得点をする本当に手のつけられないチームであった。そんなチームが最大のライバルであるドルトムントからゲッツェを獲得したわけである。
さっそく一つかましたわけだが、刻一刻とデーブスぺクター氏に似てくるゲッツェはバイエルンにおいてどのような輝きを見せるだろうか。