2013年7月31日水曜日

7/7~7/31のサッカーのこと

★ブンデスリーガ

バイエルンに4年間在籍したドイツ代表マリオゴメスの、フィオレンティーナへの移籍が決まった。10-11にはリーグ得点王を獲得し、不動のレギュラーとして活躍してきたが、12-13シーズンには、移籍してきたマンジュキッチにスタメンを奪われた。しかし、途中出場においてもその優れた得点力を発揮し、バイエルンがCLを勝ちぬきつつリーグでも他を圧倒した力の一端を担った。また、昨季体制のラストマッチとなるドイツカップ決勝での物語として優れた活躍は以前も述べたところである。

基本的に「試合には入らずゴールだけを決める」という特徴ゆえに、監督がペップに交代した来季にはますます出番はないだろう。また、マンジュキッチだけでなくゲッツェもバイエルン入りしており、明らかにマリオが多すぎた。したがって移籍はやむを得ない。彼のイタリアでの活躍を期待したい。セリエの試合は、長友が出ているインテルの試合をたまに観るくらいだが、来季はもしかしたらさらに一人日本人も…。いずれにせよ、フィオレンティーナは昨季4位という高順位で終えている。マリオゴメスはセリエを盛り上げる人材となりうるだろう。

それとは逆に、チアゴ・アルカンタラがバルセロナからバイエルンに移籍してきた。監督の熱烈な希望であったことから、プレシーズンマッチの多くで起用されている。

プレシーズンマッチは多く行われたが、7/20.21に行われたテレコムカップ(4チームの大会である。30分ハーフという変則的な試合が行われる。)を取り上げよう。新体制で初のブンデス1部所属チーム同士の対戦となるので、プレシーズンマッチの中では比較的重要度が高めの試合となる。参加チームは、バイエルン、ハンブルガーSV、ボルシアMG、ドルトムントの4チーム。

バイエルンは、1戦目ハンブルガーSVを4-0で下した。そして、翌日ドルトムントを下したボルシアMGを5-1で制し、優勝している(意外にもバイエルンはこれがテレコムカップ初優勝だそうだ)。30分ハーフにおいてもこの得点力…。中日のない連戦であるにも関わらずこの得点力…。そして得点者に偏りがないところが恐ろしい。この大会においても、チアゴは中盤の底で効果的な動きを見せ、ボルシアMG戦では移籍後初ゴールを記録している。もっとも、アンカーでの起用は守備面で不評であるようだ。ただし、ミュラーがCF起用され、ラ―ムが中盤起用されるなどしており、フォーメーションは定まっていないようである。実際、ペップはボルシア戦の後半、チアゴのパスミスを見かね、クロースとその位置を入れ替えている。ちなみに、クロースの怪我でスタメンに舞い戻り、そのまま好調を維持しているロッベンは、ペップの就任が決まった際に退団濃厚と噂されていたが、新体制でも場所を得られそうだ。

そんなバイエルンであるが、7/27に行われたドイツ・スーパーカップでは、ドルトムントに敗れている(以前も述べた)。ここでもチアゴのアンカー起用は不評だった(あれ、やはりしつこくアンカー起用されているな…)。このドルトムントの勝利は、リーグ全体において良い結果であろう。ブンデスリーガをつまらないリーグにさせないためにも、対抗馬であるドルトムント(移籍についていえば、若手ドイツ代表のライトナーについて、契約を4年延長しつつシュトゥットガルトに2年間の期限付き移籍をさせた)とシャルケの活躍に期待したい。

★プレミアリーグ

また新たなベルギー代表がプレミア入りした。トゥエンテからシャドリがスパーズに移籍。スパーズについては以前も述べた。プレミアの移籍が大きく動くのは8月になるだろうか。

そして、マンチェスターユナイテッド・アーセナルが来日した。

ユナイテッドはマリノスとセレッソと対戦した(テレビ東京でサッカーを観たのは初めてかもしれない)。

スタジアムにおけるチャントについて「マンU」という略称を使用すべきでない(侮蔑的な意味が含まれている)という注意が周知されていたようだ。これは香川が加入したときにも周知の動きがあったが、それでもこの略称はなかなかなくならない。その理由はおそらく代替案がないことにあろう。大手メディアや選手が略称を名付けて固定されることを願いたい。例えば「マンユナ」というのもあり得るだろう。しかし強い違和感があることはできない。「マンU」に慣れており、また、マンチェスターシティは問題なくマンCであることも影響しているだろう。なんにせよ、早々に変更し、慣れるほかないだろう。

試合については、セレッソの南野くんが世界に見つかったことくらいが特筆すべき点だろう。素晴らしい動きをみせ、優れたゴールを決めた。試合中にTwitterでMinaminoと検索したら、賛辞の声が多くみられた。「Minamino - reckon that'll be a name to remember...」というのが印象的だった。

アーセナルはグランパスとレッズと対戦している。

試合は都内で中継されておらず、ハイライトしか見れていない。試合外では、アーセナルの錚々たる面々が日本を楽しんでいる様が動画や画像を通じて伝えられてきた。相撲を観戦したり、ノリノリで侍の格好をしたり(ポドルスキとメルテザッカー)、寿司職人となったり(アルテタとサニャ)と、興味深かった。日本を楽しんでもらえたことが単純に嬉しい。また、グランパス戦は、ベンゲルが名古屋に帰還してグランパスと対戦するというのも物語として優れていた(ベンゲルは95-96、96-97のシーズン途中までグランパスで監督をしていた。そのとき、選手として現グランパス監督のピクシーはベンゲルに指導されていた)。

とはいえ、アーセナルのアジアツアーで最も話題をさらったのは一人のベトナム人だった。彼は選手の乗ったバスに8キロも並走し、最後にはバスに招き入れられサインや写真撮影をするという栄誉を勝ち取っている。

「The Running Man - Arsenal Tour 2013」



素晴らしい映像。「Sign Him Up!」の合唱。

2013年7月29日月曜日

雨のこと

今日も雨ですね。

2013年7月28日日曜日

シャルケ(アルサッド戦)のこと

シャルケのメインスポンサーであるガスプロム主催による、アルサッドを招いた「グラシアス、ラウール!」と銘打たれた試合が日本時間の7月27日深夜に行われた。
アルサッドは現在ラウールが所属するカタールのチームであり、2010-11シーズンのACLの覇者でもある。2011年のクラブワールドカップ3位決定戦で、柏レイソルがPK戦で敗れてしまったあのチームである。ちなみに今季のJ2得点ランク2位の選手も所属している(6月までガンバ大阪にいたレアンドロである。今回の試合にも出場していた)。 試合前からTwitterで流れていたシャルケのメンバー表には、背番号7の選手が二人おり(マイヤー。そしてラウール!)、さらには今年5月に引退した元ドイツ代表DFメッツェルダーの名があり、ファンの興奮を煽っていた。メッツェルダーは長年たび重なる怪我に苦しみ、32歳の若さで引退を決断している。 試合はまず、前半3分にファルファンがPKを相手GKの逆をついて冷静に押し込んだ。続く8分に、ファルファンの右サイドからのクロスに、クレメンスがワンタッチでサライに送り、サライがワンタッチで見事ゴールに流し込んだ。後ろから来たボールをダイレクトで押し込むサライの技術に驚嘆させられた。さらに24分には、中央に位置したクレメンスが右サイドのファルファンにパスを送り、ファルファンがドリブルでしかけマイナスのパスを送る。それを相手DFが足にあて、こぼれたところをサライがつめて3点目が決まる。そして30分には、右サイドでフリーとなっていたファルファンに対するマティプからの正確なロングパス。これを受けたファルファンが高速ドリブルでゴールに向かい、浮かせたシュートでGKを交わし4点目。 後半にはGKを除く10人が交代し、ラウールがシャルケのユニを着てピッチに立った。フンテラールとのキックオフの場面に会場が沸いた。55分、フリーでPA内で受けたフンテラールがGKとの一対一を制し後半の1点目を奪取。58分には、バストスが右奥のスペースにノールックで出したパスを、走り込んで受けたゴレツカがクロスを上げる。ラウールが走り込んでいる。と思ったらそのままボールはゴールに吸い込まれた。ゴレツカの無邪気な笑顔から推測するに、クロスだったのだろう。59分、ラウールを中心とした崩しに、DFラインから猛然と走ってきたホーグランドがPA内で受け、中央のフンテラールにクロスを送り、フンテラールが押し込んだ。これで6点目が入った。 そして64分、内田がバストスに送り、バストスが速いクロスをファーに送る。高めとなったクロスを足でトラップしたドラクスラーが驚異的なボールタッチで3人を交わし、ラウールに送る。それをきっちりラウールが左足で決めた。ラウールらしいワンタッチゴール。讃えるようにドラクスラーを持ちあげるラウール。素晴らしい瞬間だった。最後に、69分、ラウールが自ら得たPKを決め9点目。子どもたちのもとへ駆け寄るラウール。素晴らしい瞬間だ。 68分にフンテラールとの交代でメッツェルダーが投入され、86分にはラウールとマックス・マイヤーという新旧7番の交代も見られた。 これ以上ないというくらい本当に素晴らしいお祭り試合になった。シャルケとしても、様々なゴールパターンが見られた。実戦とはいえないにせよ、とりわけゴレツカ、クレメンス、サライといった新戦力の能力が素晴らしく、前線の補強は少なくとも成功したと思われる。



ちなみに、同日ドイツ・スーパーカップが行われている。

これは、ブンデスリーガの優勝チームとDFBポカールの優勝チームが対戦する試合であり、日本でいうFUJI XEROX・スーパーカップにあたる(J1優勝チームと天皇杯優勝チームが対戦する)。

2011年にはシャルケがPK戦の末カップを獲得している(日本人についていえば、香川がフル出場し、内田はベンチで出場なしという試合であった)。

今回は、リーグもポカールもバイエルンが優勝しており、リーグ2位のドルトムントがバイエルンの対戦相手となっている(昨年はその逆でリーグ2位のバイエルンがドルトムントの対戦相手となり、バイエルンが2-1でドルトムントを下している)。シーズン後の移籍した選手が実戦で初めて見られることから、スーパーカップは毎年注目に値する試合となっている。


そして、ドルトムントがバイエルンを4-2で下した。

個人的な今季のドルトムントの注目選手はオーバメヤン。彼は、ドルトムント移籍後の練習において30m走でボルトを超える記録を出したそうだ。この試合でも足の速さだけは見せつけていた。ドルトムントサッカーにうまく組み込まれたら脅威になりそうだ。

オーバメヤンは、若くしてミランに保有され、レンタルのたらいまわしにあった後、ミランが手放した昨年サンテティエンヌで活躍し、この夏にドルトムントに獲得された選手。注目したい。ちなみにイタリア・フランス・カボンの代表を選べたようだが、彼はカボン代表を選んでいたらしい。今季、どうなるか、みてみよう

2013年7月25日木曜日

シャルケ(サウザンプトン戦)のこと

日本時間7月24日の深夜、シャルケはオーストリアのフィラッハでサウザンプトンとのテストマッチを行った。ユニフォームがいつもの青でも白でもなく緑色で若干の違和感を感じつつ眺めていた。試合内容に関しては、前半は動かずぐだぐだで、後半は相手のサウザンプトンがとにかく緩かった。とくに何かが分かる試合ではないように思えた(ちなみに吉田は怪我明けでベンチ外)。ゴレツカの8、アダムサライの28、そして後半から入ったクレメンスの11のそれぞれの背番号を、ユニフォームを着た姿で確認できたことだけが収穫だった。2対0でシャルケが勝利した。

初シャルケ記事なので、今回は出場した所属選手を紹介していこうと思う。

スタメンは、GKが元ドイツ代表の79年生まれ、ヒルデブランド。そして、DFが右から内田、カーン・アイハン、ヘーベデス、フクスだった。ヘーベデスは88年生まれのドイツ代表である。代表ではCBではなくSBとして出場することが多い。そして、注目すべきは、5歳の頃からシャルケでプレーしているユース上がりの10代のアイハンが出場した点であろう。来季はリーグ戦で使われるのかも見どころだ。そして、左SBはフクスである。昨季は、後半から若手のコラシナツにスタメンを奪われることが多かったフクス(Kolašinacの日本語読みは様々な表記が試みられたが、最近コラシナツに落ち着いたようだ。)。髭が似合うこのフクスは、左足の正確なキックをもっているので、FKを任されることが多い。

そして中盤の底が、新加入の若手ゴレツカ、そしてジョーンズ。右SHが右利きのバルネッタ、左SHが左利きのバストス。右SHにはファルファンがいるため、バルネッタは左に配されることが多い。しかし、今日の試合を観る限り、やはり右の方がやりやすそうに見えた。バルネッタは、レバークーゼン時代から「控えの中でのファーストチョイス」という位置につくことが多い。昨季はリーグ戦において、先発出場2試合ながら34試合中21試合もの試合に出場している(ちなみに内田は24試合出場し、すべて先発出場である)。バルネッタは器用であるがゆえ、さ内田が怪我の際にはSB起用までされたよう記憶している。そしてトップ下にはドラクスラー。ワントップにアダムサライがついた。

交代については、まず、後半開始時に、アイハン、ドラクスラー、バルネッタが、それぞれマティプ、クレメンス、フンテラールと交代している。その後、ジョーンズに代わりノイシュテッター、サライに代わり、プッキが入った。これらについても、特に示唆は得られなかったが、新加入選手がそれぞれのイメージ通りの動きをしていたように思える。新加入選手については以前も述べた

得点シーンを記録しておくと、1点目は内田のアーリークロスが起点となった。このロングボールを今季加入した若手クレメンスが押し込もうとするもGKにあたり、その跳ね返りをフンテラールが押し込んだ。先の日本代表の中国戦における柿谷、ユナイテッドのマリノス戦における香川にもそのようなシーンが見られたが、あえてトラップをせず、ボールの進む先を正確に読みながら、身体の入れ方で相手をかわしていくクレメンスの技術に痺れた。そして、2点目は、こぼれ球をマティプがニアに強く正確なシュートを決めるという意外なシーンも見られた。毎回その年齢を確認すると驚くのだが、まだ彼は21歳である。すっかりスタメンに定着している素晴らしい才能である(ドイツ代表を選べたが、カメルーン代表となっている)。

以下、一度使ってみたかった図を作ってみた。Football Tacticsというサイトで簡単につくることができる。5分ほどでできた。



★★★

ちなみに裏でやっていたバイエルンとバルサの試合も流していたが、完全にバイエルンがパスサッカー(いわば「バルサ的サッカー」)でバルサを翻弄していた。空間に出す長短のパスが面白いように決まる様は圧巻だった。白いシャツでたたずむペップの自然さも感じられた。左SHのリベリと昨季より一列高い右SHで出場したラームがいい動きを見せていたが、まさにそのリベリーのクロスをラームが頭で合わせ、前半のうちに得点している。後半は観ていない。

リーグに1強チームがいる場合には、直接対決よりも、格下に確実に勝っていくことが重要になるだろう。とはいえ、どこかの数チームがバイエルンを倒さない限り、優勝を阻止、ひいてはリーグをつまらなくすることを阻止できない。どうなるか、期待したい。また、ハビマルティネスがベンチにいたことが気にかかったということを残しておく。

2013年7月23日火曜日

戦略のこと

7月15日のTBSラジオ「たまむすび」において、武井壮さんが二階級制覇したボクサーの粟生隆寛さんについて語っていた。

その中で本稿で注目したいのは、武井さんが、「ボクシングのトレーニングで大切にしていることを三つ教えてください」という質問をしたのに対し、粟生さんは、「バランス、ポジショニング、身体の柔軟性」と答え、「ただ、この三つはボクシングで重要だと言われていることではなく、完全に僕が思っているだけです」と付け加えたという話である。これについて、様々なスポーツ選手と交流のある武井さんは、こここそが重要だと強調した。自身も含め、「チャンピオンになったり、いままで人がやってないような記録を出す選手は、それまでその業界で成り立ってた方法論を、気にしない人が多い」とコメントしていた。

これは、人生の他のあらゆる問題に対する戦略においても同様なのではないか。

例えば、受験勉強においても同様であろう。林修さんも、受験生で高いレベルの生徒は、勉強のやり方に変なこだわりがなく柔軟に自分なりのやり方を作り上げている、ということをバラエティ番組において何度も強調していた。私の経験としても、受験生時代も、大学においても、自分が正しいと思う自分なりのやり方を明確に持っている人が多かったように思う。仕事においてもまた、同様であろう。微調整しつつ、勉強のやり方、仕事のペーパーの作り方、時間の作り方をその都度、自分の納得のいく形で柔軟に作り上げることによって上手くこなせるようになったように思う。逆にいえば、やり方を把握するまでは、効率よく問題を処理していくことができない場合が多い。自分なりのやり方を作る、という意識をするようになってからは、効率よい処理が可能になるまでの時間が短くなったように思える。今後は、このことをより意識していこうと思わされた。

スポーツは別であろうが、それ以外のことは、よほどのことがない限り、能力の個体差はあまりないように思える。やはり、結果を左右するのは戦略であろう。まずは先人のやり方を知り、それを自分でやってみるのがいいと考える。そしてそのうちに必ず自分にしっくりこない部分が出てくる。そこで、その違和感から自分のやり方を作り上げていく。それが人生なのだろう(先人の手を借りることの手っ取り早さについては以前も述べた)。そして私は、始めて1ヶ月経つが、いまだブログの書き方を見つけることができていない。「自戒を込めて」という常に付すべきマジックワードがまさに襲いかかってくる。いやはや。

★★★

Vioというボコーダーアプリを発見したのでiPadで使用してみた。先日TwitterでJB来日という言葉が流れており、Get upの人が来日したのかと思えば、そうではなかった。かといってカートコバ―ンの愛用していたギターのピックアップの話でもなかった。James Blakeだった。名前を聞いたことがあるが、よく知らないのでYoutube先生のところを訪問した。そのときのことを思い出しながら、だいたいこんな感じなんじゃないの、という試み。誰でも特になんの工夫もせずそれっぽい音になる。


2013年7月21日日曜日

ネット選挙解禁と投票率のこと

ネット選挙のこと。

都内某大手新聞の政治部所属で記者の職に就いている友人が、こんなことを言っていた。ネット選挙解禁によって明確に変わったことの一つは記者の仕事であり、twitterやニコ生をもらさず把握する必要が生まれ、仕事量が膨大に増えた、と。そう彼は嘆いてみせた。

長年、彼と話をしていると、記者の行動原理のまず第一は、スクープをとるといったことではなく、「他社が拾った事実をもらさないこと」にあることが見えてくる。冷静に想像すれば当然のことだが、意外と瞬間のイメージとはズレているかもしれない。

また、これも一般的なイメージとはズレそうだが、取材対象者と記者との関係は、新聞社の構成員と政治家といった形式的なものではなく、もっと人と人との普通の人間関係と同様であるということも分かってくる。したがって、例えば民主党政権時に国会担当となった記者は、民主党が野党に下っても担当は民主党のままである。これはアメリカにおいても同様であろう。例えば前回の大統領選で、オバマの再選が危ういというニュースの方が日本でもよく聞こえてきた。これは、実は報じられる情報の量について若干偏ったものであったようだ。このような報道が多くなされていた理由は、日本に情報を伝える位置にいる記者は、01-09の共和党政権時に与党つきであった者が多いことによると推測される(結果としては、周知の通りオバマは危うげなく再選した)。

このように、シンプルに人間的に信頼関係を築き、情報を得る、という活動が記者の活動であるようだ。他方で、選挙特番等で政治家にぐいぐい質問する池上彰さんなんかは、政治部ではなく社会部の出自を思い起こさせる手法に見えるそうだ。

なんにせよネット選挙解禁は、政党や政治家を評価する前提となる事実の量を増やすことに貢献するだろう(事実評価とそれに先立つ事実認定の話は以前も述べた)。そして、評価の前提となる事実を増やしていく役割を果たす「記者」の一人も、同様のことを実感しているようだ。選挙権者がソース付きですぐに取得できる情報が今回の選挙では格段に増えている、と述べていた。

投票率のこと。

他方で、私と彼との間で見解が分かれた点がある。それは、「投票率が高いことは善きことだ」、という点である。私はこれは限定なくしては同意できない。十分な情報を得たのち、熟議し、その上で投票する人の数が増えることは、間違いなく善きことであろう。しかし、この「事実認定」「事実評価」という各過程の成熟度を問わないまま、投票率が高いことを望むのは、はたしてどうなのだろうか。これは議論が分かれるところであろう。以前も述べた通り、手段は目的との関係で評価されるべきであるところ、投票という手段を評価するにあたっては民主主義をどう見るか、国民一般をどう見るか、といった国家観に深く関わる問題であろう。そしてこれもまた当然、とりとめなし、結論なし、である。論理の領域に属する問題ではなく、価値観の領域に属する話であるからだ。とはいえ個人が、微力ではありつつも真摯に思考を働かせることは、きっと悪いことではないだろう。

武井壮さんが似た趣旨のことをおっしゃっていたので引用する。彼は瞬間のイメージとは裏腹に非常に知的な人物である。彼が月曜にコーナーを持つたまむすびというラジオをPodcastでよく聴いている。意図をもってあらゆる行為に及んでいるのがよく分かる。また、高級車や高級マンションを有していることが騒がれていたが、彼は家をもたないキャラであっただけであり、貧乏キャラであったわけではない。優れた身体能力と知性、そして貪欲さを持っており、相応の資産を築いてきたのは当然であろう。



他方でまた、「××党が勝てないのは投票率が低いせいだ」「原発反対派が支持を得られていないように見えるのは投票率が低いせいだ」といった非論理の拠り所に投票率が用いられるのも事実である。民主主義には、民意の調達手段としての側面の他に、国民による立法府への正当化の側面もある。例えば国民主権についての憲法学者による把握として、国民主権には権力性と正当性の両側面があるとされている。権力性とは、国の政治の在り方を最終的に決定する権力を国民自身が有するという意味であり、正当性とは、国家の権力行使を究極的に正当化する権威が国民にあるという意味であるとされる。後者の「正当性」という点を軽視してはならない、という意見も重要なものであろう。実質は置くとしても、形式として、選挙にこのような正当性の表出としての意味を持たせるには、現在の投票率では足りないのではないか、という意見もまた、理解できるところだ。

2013年7月20日土曜日

説明のこと

説明能力とは、相手と自分がいかなる段階まで前提を共有できているかを測る能力だといえる。「言わなくとも分かるだろう」という部分と「ここから説明すべきだろう」という部分を峻別する能力である(「無言の前提」を測る能力については、以前も述べた)。説明が伝わらないという結果が生まれた場合に、その状況をもたらした責任は、基本的には説明する側にある。相手の理解能力のせいにしたくなることも確かにある。しかし、説明とはその相手の理解能力を測ることも含んだ行為であろう(もちろん各自の感覚、場、あるいは関係性において限度はあるとは思うが…)。だとすると、説明が伝わらない責任は、説明行為に失敗した、説明者側にある。

ということを、7月18日に地上波で放送されたゲームセンターCXにおけるADの方の有野課長への説明を眺め改めて感じたところである。自戒を込めつつ、という常に省略されるべきマジックワードを添えながら、録画の続きを眺めている。

2013年7月18日木曜日

名付けのこと

殺された理由が判明しないうちに、殺した側を「加害者」と呼び殺された側を「被害者」と呼ぶのはかなりミスリーディングな名付けだと思う。殺人行為においてはその通りであろうが、コメントを出す者が殺人行為のみをとらえて評価しているとはとても思えず、また、そうすべきとも思えない。

とりわけ「被害者」と呼ぶことには慎重になった方がいいだろう。いったん「被害者」としての地位を得た者は、攻撃的になりやすい。また、「いかなる攻撃を仕掛けようと自己が正義の側にある」という確信を持ってしまう場合もある。社会における「攻撃」はできるだけ少ない方がよい、という前提に立つのであれば、「被害者」という名付けをすることには慎重になった方がよいのではないか。

若干逆張りの感の強すぎる記事になってしまったが、『「被害者」による侵害』にもそろそろ目を配った方がよいのではなかろうか。まかろーに。てじにゃーな。

2013年7月9日火曜日

トットナム入門のこと

先日行われたイベントで、プレミアですごいと感じる選手は誰かという質問に対し、香川真司はトットナム(「スパーズ」と呼ばれることの方が多い。以下「スパーズ」とする。)のボランチのデンベレと答えたという。特にこの話の裏はとっていないが、仮にこの発言の事実があったとすれば、なかなか興味深い。デンベレは昨季フルハムからスパーズへ移籍してきたベルギー代表の25歳の選手である。ポジションは、中盤の底の左側。左利きの選手である。日本代表でいう遠藤と同じポジションということになる(ピッチの左サイドにおいて、右利きの選手が効果的なパスを通すのは難しいといわれているが、遠藤はその卓越した技術で役割を果たしている。)。

11-12シーズンまでデンベレのポジションには、現在レアルマドリードに所属するモドリッチが配されていた。入れ替わるように加入したデンベレは、あのファンタスティックなモドリッチに見劣りすることなくその実力を発揮しスタメンに定着している。

香川真司とデンベレとの一度目の対戦は昨年9月、プレミアリーグ第6節であった。香川はこの試合でゴールを決めているが、試合としては2ー3で敗北している。スパーズとしてはアウェイ、オールドトラフォードにおける実に23年ぶりの勝利だったようだ。

そして直近では1月に対戦している。スパーズはこの試合で、4連勝中のユナイテッドに対し引き分けにもちこんでいる。しかも、シュート数でいえば、トットナムが25に対し、マンチェスターユナイテッドはわずか5にとどまっている。また、パス数をみてみると、デンベレが両チーム最多の55本中50本を成功させている。デンベレが圧倒的な存在感を示していたことが数字からも分かる。後半17分にルーニーと交代した香川はおよそその半分27本(25本成功)にとどまる(ちなみに香川がハットトリックを達成したノリッチ戦では、一方的な試合展開でもあったこともあるが香川は74本ものパスを行い67本成功させている)。もっとも、おそらくデンベレの最大の魅力は、むしろ数字には現れないところにあるといえる。それは、視野の広さと状況判断の良さだろう。的確に「嫌な場所」にパスを供給し続けるデンベレを、あるいは的確なポジショニングでボール奪取するデンベレを、香川は目の当たりにしたのではないだろうか。


★★★

以下、さほど詳しくない筆者によるスパーズ入門を若干記述したい。

スパーズというチームはここ4季、4位、5位、4位、5位と安定した成績を残している。スパーズといえば、ベイルの覚醒が昨季は取り上げられていた。ベイルはもともと左SBの選手であり、SBの実力者(守備面では不安視されつつ)として把握されてきた。例えば元イタリア代表SBのマルディーニは、今年のはじめに発表されたインタビューにおいて、注目している現代的なSBの選手としてベイルの名を挙げていた。マドリーへの移籍が噂された際にも、SBとして起用されるとも言われていた。そんなSBとしても優秀なベイルは、一列前のSHに配置され、その卓越した得点力を発揮していくこととなり、その後、昨季の活躍に至る。

若干の脱線。

コンバートは、ときに選手に劇的な変化をもたらし得る。例えば、都並監督のもとでボランチ起用され、それほど特別な選手ではなかった香川真司は、クルピ監督のもとでトップ下としてその才能を開花させたことは有名だ。また、ピルロはトップ下からボランチへ一列下げることによってその才能がさらに発揮された。すでに特別な選手であったピルロがさらに変身を残していたとは、人々を驚かせた。筆者は日本代表でいうなら、内田篤人のボランチ起用に興味を持っている。本人も関心がある旨の発言をしているところであるが、シャルケにおいては、いくつかの試合でチーム内でのボールタッチ数第1位を記録している、内田にボールがわたり彼が顔を上げることが攻撃のスイッチとなることも珍しくない。まさに代表でいう遠藤のように、彼が顔を上げると他の選手が走り出すのである。このような役割を担える彼がボランチで起用される試合を、いつか見てみたいものである。

話を戻そう。ベイルの他の注目選手を記したい。やはりチームを知っていくには、まず有名選手から入るのがよいだろう。それは例えば、サッカー自体への興味をもたらす際、Jリーグへの興味をもたらす際でも同様であろう。

先に述べたデンベレは、ボール奪取能力も素晴らしいが、ボールキープやドリブルも得意としていることから、一列前に置くことも有効であろう。以前のチームではそのように使われることもあったが、スパーズでは中盤の底に配置されている。怪我により長期離脱したサンドロが復帰し、また、先のコンフェデで印象的な活躍をみせたパウリーニョの加入が発表されていることから、デンベレのそのような一列前での起用が、来季見られるかもしれない。11-12では、モドリッチとパーカーがボランチのコンビであったが、12-13ではデンベレとサンドロが基本線である(今年のはじめにサンドロが離脱してからは、パーカーが入ることが多かった)。来シーズンはどのようなサッカーになるだろうか、期待したい。

CFにはデフォー(ゴール前でのキレが持ち味の身長低めのイングランド代表)とアデバヨール(フィジカルに優れた身長高めのトーゴ代表)がいる。デフォーが怪我で離脱しているときでさえ、アデバヨールが起用されずデンプシーが1トップを務めるなど、昨季はアデバヨールの勢いある姿は正直なところあまりみられていない。

また、右SHはレノンである。あのイングランド代表の足の速いレノンである。清武との交代以降、代表で松井が見られなくなったイメージをなんとなく持っているが、ベッカムとレノンもそのような関係にあったと記憶している。また、イングランド代表の選手でいえば、ウォーカーが右SBを務めている(現状では、代表においてはリバプールのグレン・ジョンソンの控えであるが、23歳と若く、そのスピードや豪快なドリブルは非常に興奮させるものがある)。などといったように、有名どころや若手のホープがいい感じに融合したチームだといえよう。

プレミアの他チームサポの方々からあまり嫌われることのない印象のある渋いチームとして、なんとも魅力的なスパーズである。

2013年7月7日日曜日

批評家・評論家のこと

単純なものを複雑なものに見せかけることは容易い。仮に困難であるとしても、いずれにせよ誰かにとって利益を与える行為ではないように思える。他方で、複雑なものを単純なものにするのは困難な仕事だ(素数が暗号化に用いられるのと同様だ)。そして、それは誰かに便益を与える仕事であろう。

批評家・評論家と呼ばれる者は、本来なら、複雑なものを単純なものに噛み砕き説明することがその役割であるはずだろう。しかし実際はどうだろうか。彼らの多くが勤しんでいるのはその逆であるように思える。例えば、自分が名付けた概念で社会現象に説明を与えようとする者がいる。概念を練り上げ、社会現象に統一的な説明を与えることができれば、その試みは当然複雑なものを単純なものにするものであるといえる。しかし実際はどうか。言い換えて終わりだ。概念を定める実益はまったく説明されない。それどころか、議論を閉じたものにし、第三者からすれば、言い換えた分だけ無為に複雑化されたものを提示されることになる。酷い場合には、自分が予め用意した枠で把握することに拘るあまり、他人の意見を適切に把握できない者までいる。

また、彼らが好んで使う「考えねばならない時代に来ている」といった言い回しは非常にミスリーディングであろう。「ねばならない」は一体どこから調達したのだろうか。多くの場合それは説明されない。真に受けた大学生たちが、読みにくい、内容のない文章を読み、何か社会の役に立つための態度を示した気にさせられる。最近では会員制のカフェもあるとか。

さらに、「存在しない極端なバカを叩く」という手法も見られる。一体なんの意味があるのだろうか。

例えば、「違法ダウンロードに刑罰をつければCDの売り上げが上がると思っている音楽業界」というのは一時期よく見られた仮想敵だ。さすがに刑罰化したことが売上アップに繋がるなどと考えているわけではないだろう。売上を高める努力をする前提として、違法ダウンロードに歯止めをかけておく、ということは十分に理解できる方針であろう。合理的に判断された選択だと考えれば、目的をこのように捉えるのが自然だろう。そして、この目的は合理的なものだといえよう。人間のモチベーションは有限なのだ。違法にダウンロードされない環境の方が努力できる、これは我々の経験則に照らして容易に想像できる。

また、反原発に関しても同様である。「原発のデメリットを知らずに原発を維持しようとしているバカ」という存在しない相手が叩かれているのをよく目にする。これは本当に意味のある行為なのだろうか。あらゆる決定はメリットとデメリットを比較してなされる。本当に反対したいのであれば、架空のバカを叩くのではなく、メリットを認めた上で、それでもデメリットが上回る、というように議論を進めるべきであろう。また、以前も述べた通り、事実評価に先だって事実認定自体も問題となるが、これについても、陰謀論的な決め付けではなく、データ(これには電力需要に対応できるかということや事故リスクといったものだけでなく、「なんとなく嫌だ」という主観も含めていいかもしれない)から丁寧に議論すべきであろう。さらには、自分が正義の側にあるという確信もまた、危険であろう(これについては別の機会に述べたい)。

さらに、何かのプロが、多くの人の直感と反するような行動をとった場合に、事実評価の拙さが責められることがある。しかしそれは多くの場合適切ではないのかもしれない。プロとして熟議しているはずだということを前提とすれば、事実認定のレベルに相違がある、すなわち何か秘匿された情報があると考える方が良いだろう。例えば外交問題はその最たるものだろう。国民の直感に反する行為がとられた場合には、何か事実認定レベルで前提が異なると考えるほかない。「(情報が不足しており)何も言えることはない」と認めることも、時には重要なのではないだろうか。

本稿こそが、「存在しないバカ」叩きなのではないかという疑問が沸くかもしれない。しかし、いわゆる批評家・評論家の著作を読めば、あるいはTwitterを少しでも覗けばすぐに実感できるであろう。

★★★

確かに、善悪とは別の話として、事実として、意見の価値は「誰が言ったか」と「何を言ったか」の掛け算だ(このことは、大学時代の恩師もよく言っておられた。また、林修先生の著書にも「権威トレンド」と表現され言及されている。個人としても、例えばかわいい女の子の言葉とそれ以外の言葉、親しい友人の言葉とそれ以外の言葉もつ影響力の違いは、広く共有できる感覚であろう。)。これは、日常のレベルでも、社会全体においても、動かない事実だと思われる。そうである以上、「誰が言ったか」という部分を高めるため、手柄をあげ、商業的に成功することも必要である。ここは否定できない。しかし、「誰が言ったか」のみに頼っているような状況は、大いに違和感を感じざるをえないところだ。

2013年7月6日土曜日

7/1~7/6のサッカーのこと

◆本田の移籍問題
ミラン副会長のガリアー二の先月末の発言は「ミランには攻撃的な選手がたくさんいる。本田に入る余地はないね」にとどまるものであった。しかし、7月4日には「本田?どうなるかみてみよう」と発言するに至っている。我々日本人は本田の移籍に関し幾多の一喜一憂を経験している。今回も予断を許さないが、進展は進展である。

「どうなるかみてみよう」というのは、移籍関係の話題において、受け手の想像力を執拗に喚起する言葉としてよく用いられるものだ。原文では「Honda? Vediamo...」と述べている。イタリア語の発音は英語とは異なり綴りと発音は固定されており、単語ごとに読み方が異なることはない。そして、ローマ字読みでそれっぽく発音すれば基本的には大きく間違うことはない。vediamoはべディアーモと発音する。英語でいうseeにあたる動詞である。ホンダ?ベディアーモ。

移籍関係でミランに関し覚えておくべき人物の名前は二つある。一つは、上記のガリアー二であり、もう一つが名誉会長のベルルスコーニである。そう、三期にわたりイタリアの首相を務めた人物がその男である。先月末に禁固7年の地裁判決がなされたことが記憶に新しいが、ガリアー二はこのベルルスコーニの傀儡であると言われている。この判決後においても、ガリアー二はミラン現監督であるアッレグリの続投につきベルルスコーニとの話し合いの場を持った。結果としてアッレグリ監督の続投が発表された。このように、ミランといえばこの二人の人物を把握すれば、話が見えやすくなるだろう。

現地の記者等から様々な情報が小出しにされつつも移籍がもたついている理由は、本田の現所属チームがその選手を手放さない手腕に長けたチームであることも当然その一つとなっている(移籍金設定の綱引きにおいて、非常に強気にでるチームである)が、以前述べたような経営に対するレギュレーションの影響も大きい。リーグにおいては、以前述べた通り、セリエAは経営破たんすると強制降格のペナルティがある。また、UEFAにより欧州のクラブには2011年6月からファイナンシャルフェアプレーも導入されており(具体的には、11~14の3シーズンで認められる累積赤字の額が決められており、これに違反するとCLやELの出場権が剥奪されるなどの大きいペナルティがある)、これも当然に適用される。このように移籍において慎重な動きを求める切実な背景がある。


★シャルケのこと
シャルケの移籍に関して覚えておく人物はヘルトというスポーツディレクターである。彼が移籍に関する責任者となっている。

先月末にはマインツのアダムサライのシャルケ入りが決定した(その影響か岡崎はマインツへ)。ワントップのセカンドチョイスのマリカは頼りなく、また、プッキは覚醒までに時間がかかりそうであり(今年3月のW杯予選でスペイン代表相手に得点してからは、シャルケでもいい動きを見せ、得点もしている)、アダムサライはフンテラールのバックアップの即戦力として期待できそうだ。

そして7月2日、かねてより噂されていたゴレツカのシャルケ入りも発表された。ドルトムントからの関心も噂されていたドイツの若き大器ゴレツカがシャルケ入りを決めた理由の一つは、転校せず高校を卒業できることだったそうだが、もう一つは、シャルケの若手育成に対する評価だったという。下部組織ではエジル、そしてノイアーを輩出しているが、昨期シャルケではトップチームで3人の10代が活躍している。一人はドイツフル代表にも選ばれているドラクスラーであり、ホルトビーの移籍もありトップ下での経験を積んでいる。そして、左SBではフクスの不調もあり、コラシナツがシーズン途中からスタメンに定着している。もう一人はマックス・マイヤーである。彼もドイツの将来を支える若き大器と言われている。このような環境が、彼がシャルケ入りを望んだ理由の一つとなったようだ。

なお、このほかにはライバルの黄色いチームからフェリペ・サンタナが移籍している。同じブラジル出身のバストスと仲が良いそうだ。そして、ケルンからクレメンスが移籍した。昨年末のドイツ杯(DFBポカール)のシュトゥットガルト戦では、走り込んでクロスをペナルティエリア前で受け、トラップでDFをかわし得点を決めていた。左右の足で強烈なミドルを決め、走り込んでワンタッチゴールを決め、FKも決めることができる。イスラエルで行われた先のU-21欧州選手権においてもホルトビー率いるドイツ代表として全試合に出場している(ロシアに勝利しているが、オランダとスペインに負けグループステージで敗退)。なお、U-21とあるが、これは予選開始時の年齢制限であり、本大会時には23歳以下の大会となっている。クレメンスは現在21歳である。


★ゲッツェの入団会見問題

ドルトムントからバイエルンに移籍したゲッツェの入団会見が7月2日に行われた。そこでゲッツェはクラブのスポンサーであるアディダス製のユニフォームを持ちカメラに笑顔を向けているが、その着用しているTシャツの胸には大きくNIKEと書かれていた。そして怒るアディダス。そして謝るバイエルン。

3冠を達成した昨期のバイエルンは圧巻であった。補強したダンテ(先のコンフェデのイタリア戦でダビドルイスの怪我により代わりに入りフレッジのシュートのこぼれ球を押しこんだブラジル代表の髪がもさもさしたDFである)、ハビ・マルティネス(先のコンフェデのイタリア戦でトーレスの代わりになぜかワントップの位置に入れられたスペイン代表のボランチである)、そしてマンジュキッチがことごとくあたりスタメンに定着し、マンジュキッチにスタメンを奪われたマリオゴメスは少ない時間でも結果を出し、クロースが怪我をすればミュラーがトップ下に入り右SHにスタメン復帰したロッベンは輝きを取り戻し、メンバー全員がそのクオリティを発揮した。ブンデスではほぼ控えメンバーで臨んだ試合においても大量得点をする本当に手のつけられないチームであった。そんなチームが最大のライバルであるドルトムントからゲッツェを獲得したわけである。

さっそく一つかましたわけだが、刻一刻とデーブスぺクター氏に似てくるゲッツェはバイエルンにおいてどのような輝きを見せるだろうか。

2013年7月3日水曜日

共感と理解のこと

猫好きの気持ちが全く理解できなくとも、猫好きの気持ちを犬好きとして了解することはできるだろう。友好な関係を築くのに必要なのは、共感ではなく理解だ。理解ができなければ問い質せば良いだろう。理解という論理の領域を解消すればよく、共感という価値観の領域をすり合わせる必要はない。

他者に対し違和感を感じてしまうことは避けられない。善かれ悪しかれ事実として価値観は多様だ。とはいえ、共感ができなくとも理解できるならば、相手に対する違和感の属するところは、論理ではなく価値観の領域であると気づくことができる。違和感の属するところが論理の領域であるときは、相手の誤りを指摘し意見を変えさせることができる。しかし、違和感の属するところが価値観の相違にあるときは、あらゆる指摘はブーメランである。相手よりメタに立つこともできない。そのことに気付けば、次の話に進むことができる。そもそもコミュニケーションとはそういうものではなかったか。

2013年7月1日月曜日

面接の奇問のこと

世界有数のワールドリーディング気の利いた企業であるGoogleの面接における、「飛行機にはいくつのゴルフボールが入りますか」「マンハッタンにはいくつのガソリンスタンドがありますか」という奇問は、面接における気の利いた質問として有名であった。このような質問を採用する企業は日本にも少なからずあり、一種の流行となっていた。いや、むしろ流行を越え文化になってさえいるとも聞く(話は逸れるが「流行ではなく文化にしたい」という発言を最初にしたのは誰だったのだろう)。

ところが先月16日のニューヨーク・タイムズ紙に以下のような記事が掲載され、ネットでちょっとした話題となっている。Googleの人事担当のバイスプレジデントであるLaszlo Bock氏による発言である。

On the hiring side, we found that brainteasers are a complete waste of time. How many golf balls can you fit into an airplane? How many gas stations in Manhattan? A complete waste of time. They don’t predict anything. They serve primarily to make the interviewer feel smart. 
(  http://www.nytimes.com/2013/06/20/business/in-head-hunting-big-data-may-not-be-such-a-big-deal.html )
brain teaserというのは「奇問、難問、クイズ」といった意味である。「奇問は完全に時間の無駄だった」と明言している。テーマを与えコミュニケーション能力を測ることに役立つようにも思えるが、全く無駄だと断言していることは興味深い。どうやら様式美としてのお洒落さをもたらす機能しか有していないようだ。しかし、それよりも注目したいのは、調査の結果により判明した事実をもとに、あっさりと意見を転換している点だ。以前述べたような、「頭の良い人の態度(物事を上手くやる人の態度)」、すなわち、前提とする事実に変化があったり誤りがあった場合に「はばかることなく」意見を改めるという態度の典型といえよう。こういった些細な発言まで気が利いている。

奇問に関するフォロワー企業は、これを受けてはたして方向転換をするだろうか。非常に気になる。もっとも、時間の無駄というのは、「優秀な者を採用する」という物差しをあてた場合に限られ、「お洒落さをもたらす」という点にこだわるならば、継続するのもありかもしれない(手段は目的との関連でのみ評価されるものだ、ということに関しては以前述べた)。そういった企業のエントリーシートには、白紙の中央に「心か」と一言添えるとよさそうだ。

ちなみに、この次のパラグラフで、Behavioral Interviewは効果があると述べている。「今までの人生で困難を解決した経験を教えてください」といったような質問がこれにあたるようだ。極めて典型的な質問である。奇をてらわず直球でいくやり方が最善だったようだ。おそらくこういった質問に対しては、「状況説明⇒問題点の指摘⇒解決方法」という小論文の定石で組み立て、最後に解決方法を自分が実施した結果について述べるとよさそうだ。小論文の定石と言ったが、日常会話のレベルにおいても、基本的には面倒がらず状況説明から始める方が、結局のところ喋るコストは減ることが多い。遠めの道が見えているときの近道は、だいたい遠回りである。相手と共有している「無言の前提」を測る能力は、人生の多くの局面で非常に重要になっているように思える(本稿において「無言の前提」を測り損ねている可能性があるので付言するが、「心か」とはすなわち『BLEACH』である)。

また、さらにその後のパラグラフでGPAに関しても述べている。新卒以外にはGPAの数値は役に立たないので、卒業して2,3年の人以外にはGPAの提出を求めないようにしたそうだ。このほかにも実践的な気の利いたことが色々載っている。気が利いている。